こんにちは、インディ(@aiirodenim)です。
リーバイスが『MADE IN THE USA』という名で展開している現行品501®の米国生産モデルのラインナップ。
2017年から始まり短い期間だけ生産された、CONE MILES社のWHITE OAKのデニムを使ったスモールe表記の赤タブを持つ米国製501と、
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この2018年後期からスモールeが廃止され、ビッグE表記の赤タブを持つ米国製501。
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この2本。販売時期が異なるだけで、メーカー(Levi’s)としてはモデル名(「501® MADE IN THE USA」 )も同じ、品番(005012546)も同じ、値段(16,000円)も同じ。
販売時期が異なるというか、店舗の在庫次第で徐々に切り替わっているため、特にネットで購入する人たちは混乱していることでしょう…。
実際のところ、商品のディテールを見ていくと「別物」と言っていいレベルの相違があるこの2つのモデル。
本日はその相違点をじっくりと解説していきます。
結論を先に述べると…
比べて分かった、生産終了したMADE IN THE USA『スモールe』は米国製を語るに足る「良心」が見えるモデルであるということ。
と同時に、2018年後期から販売されている現行モデルでは「米国製」に持つ固定概念を考え直さざるを得ない内容かと。
目次
リーバイス501® MADE IN THE USA 『スモールe』と『ビッグE』の比較
同じサイズでパーツや縫製仕様を見ていく
この2本。同じウエストサイズ(33)なので、比較がしやすいですね。
それでは細部を見ていきましょう。
【違い①】デニム生地が違う
まず、最も大きな違い。2018年の現行501® MADE IN THE USA ビッグEのデニム生地は米国“以外”(日本のカイハラか、インドのアルビンドか)での生産に対し、スモールeは米国製 CONE MILES社のWHITE OAKが使われています。こうやって並べると、その色味の違いがはっきり分かりますよね。ただ、どちらが色落ちが良いのかは未検証。
赤耳の出方も違います。左側の方がレプリカっぽさがありますが、右側が米国製のWHITE OAKです。
【違い②】赤タブの表記が違う
2018年後期から、リーバイスは47年ぶりに赤タブの表記をスモールeからビッグEに変更しました。この表記が違います。赤タブの素材に違いは見当たりません。【違い③】革パッチのデザイン・素材が違う
左側が現行のビッグEの革パッチデザイン。右がスモールeの革パッチ。現行ビッグEの方がヴィンテージ風というか、昔のデザインに近いもの。一方で右側は501以外の現行品で多く見られるデザインが採用されています。
革の素材も微妙に違う。現行ビッグEの方が分厚いのですが、2層の革を重ねているもの。
スモールeの方が薄い革ですが、一枚革。こっちの方がエイジングは楽しめそう。
【違い④】アメリカ国旗の織りネームが違う
スモールeの方にはWHITE OAKの織りネーム有。
現行のビッグEの方は、アメリカの星条旗だけが織りネームのデザインになっています。一方でスモールeには星条旗の下に「MADE IN USA」の表記あり。【違い⑤】ベルトループの縫製仕様が全然違う
上記にあげた2モデルの違いは副資材と呼ばれるパーツの違いなので、この2018年のタイミングで色々と変えたんだなーという予測が出来る部分ではあります。
しかし、ここからは仕様を変えたというより、「生産ラインそのものが変わった」と思われる仕様変更が多数見られます。
例えばこのベルトループ。
ベルトループの縫製、この2つのモデルは全然違います。左は現行501ビッグE、右がスモールe。縫製糸の色が違う…ていうのもありますが、
写真では分かりにくいですが、現行501ビッグEはただ生地を重ねて縫い付けたベルトループ。いわゆる、「今の量産品の普通のベルトループ」です。それに対してスモールeは、いわゆる中高(中盛)仕様のベルトループになっています。
よく見ると太さも違いますね。使っているミシンが全く違う訳です。
ベルトループのカンヌキ幅も全く違い、スモールeの方が「これでもか」と頑丈に縫製されています。すごーく荒々しいスモールeのカンヌキ。だが、これが米国製っぽさ。
【違い⑥】コインポケットの形状が違う
この2モデルは、コインポケット の形状が違います。現行ビッグEは直線的な形状と縫製。
一方、スモールeは上が広い台形になっており、縫製もヘタウマ感のある仕様。個体差があるのかも??
【違い⑦】ヒップポケットの形状が違う
実は、ヒップポケットの形状も違います。この写真は同じサイズでの比較なので、その違いが分かりやすいですね。現行501 ビッグEのポケットは縦長スリム。スモールeのポケットは上下が短く、左右の間口が広いタイプ。
スモールeのポケット形状の方が「501をフルモデルチェンジ」とした2013年モデルの系譜を引き継いでいる気がしますが、どうなんでしょう。
ポケットの間口の縫製も違います。使っている縫製糸の色が違うというのもありますが、ビッグEの方は周辺部が直線で縫製されているのに対し、スモールeはポケット内側に逃げるようなミシンの走らせ方をしています。
よく見ると、糸の目調子だったり、ピッチ(運針数)も全く違うんですよね。
このように縫製の仕様が違うのは、このポケットだけではありません。
総じて、スモールeの方が「魅了的」です。
【違い⑧】縫製仕様が総じて違う
全体を通りて、様々な箇所の縫製仕様が異なります。例えばこのベルトの部分。
ウエストのベルト帯の縫製が違います。
ビッグEは上下の縫製糸に同じものを使用。一方でスモールeの方は帯の上と下の糸の色だけでなく、番手(太さ)も変えているのが分かるかと思います。 巻き縫いの縫製仕様が違います。ミシンのピッチ(運針数)が全然違っていて、右側のスモールeの方がピッチが細かい事が見てとれます。
そして現行ビッグEの方が針幅(二本の糸の間の距離)が狭く、スモールeの方が広くなっています。ミシンの調子をこのタイミングで変えたというより、やはり生産ラインが別物だと考える方が自然でしょう。
ボタンホールの糸の色が違います。ビッグEは濃紺、スモールeは黒。 フロントのロックミシンの糸数が全然違いますね。 小股の縫製仕様も大きく変わりました。このように、スモールeは太い番手の糸を使って荒々しく仕上げられています。
こういうのを見ると、「MADE IN THE USA」というに足りる説得感があります。
脇横の縫製(クインチ)も、並べれば一目瞭然。 スモールeの方は太い番手を使って、長く縫い付けられています。全体を通してみると、現行のビッグEの縫製は効率化を目指して設定されている感じが否めません。
【まとめ】同じアメリカ製でも、モノづくりの哲学が異なる2本。
この2本。
「アメリカ製」を売りにした、リーバイスの『MADE IN THE USA』シリーズ。
色落ち=経年変化の良し悪しは未検証の為、どっちが最終的に良いジーンズか、という点は申し上げられませんが、リジットの状態で比べることで見えてきたことがあります。
生産終了となった【501® MADE IN THE USA スモールe】には確かに米国の匂いが残る一本です。
WHITE OAKを使って、アメリカらしいジーンズを作ろう!という気持ちが見て取れます。
一方で現行の【501® MADE IN THE USA ビッグE】は、上記の検証を元にした考察になりますが、前者とは生産背景が全く異なると思われます…設備も違うし、生産ラインの組み立て方も違うはず。
もっと突っ込んで言ってみれば、現行の2018年ビッグEは、米国内の工場で中国と同じような効率的な大量生産ラインを作り上げた結果の製品だと思います。
これは意思を持って、リーバイスが目指した生産方針であり、その理由はトランプ現大統領が仕掛けた中国との貿易戦争のリスクを避けた、製造業としての生き残り戦略の一つ(中国製造比率を下げ、米国内製造比率を上げる)であると私は考えています。
この2本は、同じアメリカ製でも、目指したところが違うジーンズなのですよ、きっと。
我々消費者にとって【米国製】とは、今まではアメリカらしい自由な空気感と質実剛健なモノづくりを表す言葉でした。
ただ、目を冷まさなければなりません。【米国製】だったらなんでも良いって訳では無いということです。…日本製もそうですけどね。
我々、モノを買う立場の人間が、モノを選ぶ目を養うことは、ますます重要になることでしょうね。
とは言え、実際に私から見たスモールeの最終モデル。
正直、予想を超える一品でした。これを手に入れられたことを素直に喜ぶべきなのでしょう。
こういうモデル、ぜひリーバイスさん、また作って頂きたいと思います。
あ、最後に言わせてください。
昔ならともかく、今の時代にここまで性質の違う商品を、同じ商品(品番)として販売するのはちょっと無理があると思います(汗
↓スモールe、WHITE OAKのリジッドはもう、ほぼ在庫なし。
最近はインスタもマメに更新中なので、宜しければフォローください↓
本日もご一読、ありがとうございました。
はじめまして
数年ぶりのジーンズ購入だったのですが
たまたまmade in the USAを見つけてモノをみると
2種類のディテールがあって困った際にこちらが
参考になりました。
ただこのディテールの違いは2018モデル全般に言えることのようでベトナム製などでも同様の変化があります。
数年前購入したベトナム製の501-1484とこの2017モデルはほぼ同じ特徴でした。
2013年以来のモデルチェンジかもしれませんね。
ちなみに501-1484の2018モデルではサブタイトルが”CONEMILLS”なんです。
ショップ説明ではCONE製デニム使用とありました。
この辺も面白い展開です。
>みちゃおさん
コメント、ありがとうございます。
そうですね、501も含めて2018年はかなりの変革期だと思います。
とは言え、海外の店舗を回って見ると、まだこのあたりが曖昧でして…今でもスモールeが当たり前のように並んでいます。このあたりは日本と海外の展開が違うことでの弊害が色々出ているようですね。
またCONE DENIM(CONE MILES)は今でも採用されてますが、ホワイトオークはもうLVC以外では見なくなりましたね。
CONEに関する詳細は、こちらの記事も読んでいただければと思います。
https://www.aiirodenim.com/levis-conedenim-white-oak-13802/
またコメントいただけますと嬉しいです!
いつも楽しく拝見しています。
この記事は00501-2546ですが、私は00501-2455のユーズド加工モデルをスモールeとビッグEを入手できましたので少しコメントさせてもらいます。
上の記事にある通り同じ品番でも別物のように違います。
スモールeはいい感じの色落ち感と好きなブルーの色落ちがきれいでカッコいい感じで、やはりホワイトオークなので右にねじれています、ヴィンテージのような感じです。
生地感もいいです。
かたやビッグEは元々生地にアイボリーの色加工していてそれから色落ち加工している感じです、色味は501STFのような紺の青黒みが強い明るめの青ではなく暗めの青の感じです。
生地感はあまり違いはない感じですが、ねじれていません防止加工してあるのか味は出ていません。
その他は08501のような縫製の感じですが13501以降が少し凝り過ぎ感があるので普通にもどった感じです。
フィット感はスモールeよりタイトな感じがします。
どこかの記事でカイハラ製とありましたが違う感じがします。
カイハラは履いてくるとツルツルしてくるのですがそれがありません。
なので、501STFの生地メーカーかなぁと思われます。
画像は後ほどインスタに上げる予定です。
>コブクロウさん
コメントおよびご情報ありがとうございます!
インスタも拝見しました。考察が深く、興味深く読ませていただきました(^^)
なるほど、加工モデルでも生地感も全く違うのですね・・・。
尚、新しい方(ビッグE)の生地はインド産(アルヴィンド社)のようです。もう、レギュラーのリーバイスはファストファッションと同等の分類になりつつありますね。
LVCの復刻シリーズも、もうすぐ終わる可能性が噂されてます。
良いものは躊躇せず、早めに手に入れておきたいですね〜。
またコメント、お待ちしております!
Indyさん、はじめまして
日頃より愛読させて頂いております。
造詣の深い情報と詳細な分析やこだわりが非常に面白く参考になります。
こちらの情報を元に、昨年スモールeのMADE IN THE USA modelをサイズ違いで2本調達し(ギリギリかなぁ)、うち1本を生ばきする毎日です。
ノリだけ落として、シュリンクさせて、リジットに近い状態で鬼ヒゲ目指して楽しんでおります。
1年半経って、ヒゲやハチノスも目立ってきて、やっと何となく「タテ落ち」も見えてきた感じです。
これこそ最後のホワイトオークなのかとニヤニヤしております。
画一的な工業製品のデニムと言うよりは、ザッとした荒さや無骨さも感じ、ちっと雑だけどこれはこれで味あって丈夫だな、とアメリカ的アナログ感も伝わってきて大好物です。
今後も育成を楽しんで、報告出来る程に様になって来たら、ご報告したいです。
情報ありがとうございました。
デニムシャツ再販されたらお願いします。
>まるこめさん
コメント、ありがとうございます。
スモールeのUSA、手に入れられたのですね! おっしゃる通りで、わざとらしく無い雑さが随所に見れて、この時代に珍しく「USA」を感じる製品ですよね。
本当に良い&価値のあるものだと思います。是非大切にされてください。
また、これからも引き続き、ブログを楽しんでいただければ幸いです。
デニムシャツも楽しみにお待ちください!