こんにちは、インディ(@aiirodenim)です。
ヴィンテージジーンズ・ジャケットの悩み、それは「洗濯」。
ヴィンテージデニムには50年以上も昔の物も多く、洗濯した時に想定されるダメージや、その結果次第で価値が下がってしまうリスクを考えると、レプリカデニムのように気軽に洗濯する訳にいきません。
それゆえに、ヴィンテージは「洗濯しない」という方も少なく無いかも知れません。
しかし、穿いていて「洗濯しない」のは当然不衛生。
また、デッドストックは別として…、
あなたが穿かない前提のコレクション目的で購入したジーンズでも、前オーナーが一体どういう人で、どのような環境で穿いていたか分かりません。
あなたが想像している以上に、とんでもなく不衛生な一品の可能性もあります。
もしかしたら、ノーパンでダイレクトに穿くようなクレイジーガイがオーナーだった可能性も…(!?)
いずれにしても、洗濯していないヴィンテージデニムには独特のニオイと、表面上のヌメリを感じることがしばしば。
なんと言うか、発酵食品のような熟成とでも言いましょうか…。
本当は誰もが思っているだろう、「…このままで良いはずがない」と。
しかし、それでも洗濯したくない…。
そう考える理由の1つに、「色落ちさせたくない」というのがあります。
でも洗濯をしなければ、生地もどんどん痛んできます。
生地に付着した皮脂の汚れを餌に、細菌・バクテリアがどんどん増殖し、生地そのものを荒らしていきます。
大切なジーンズであればあるほど長く大切にしたいから、本来なら洗濯は必要。
そこで本日は、経年変化が進行したヴィンテージデニムにぴったりの、「ダメージを極力与えず、インディゴも落とさず、デニムについた汚れ(特に皮脂よごれ)を集中して落とす」洗濯方法をお伝えしたいと思います。
同じように悩んでいる方、是非ご参考にしてみて下さい。
※高価なデニムで実践される方は各自、自己責任でお願いします。
目次
ヴィンテージジーンズ(デニム)の洗濯方法
ヴィンテージジーンズを洗濯する時に気をつけたいのは、洗濯によるダメージと、洗濯による色落ち。
これさえ気をつけることができれば、洗濯をしない理由はありませんよね?
「ダメージを極力与えず、インディゴも落とさず、デニムについた汚れ(特に皮脂よごれ)を集中して落とす」
このための洗濯のポイントは6つ。
- 汚れのひどい箇所を把握する
- ジーンズ専用洗剤を使う
- お湯を使う
- 手洗い/もみ洗いをする(洗濯機は使わない)
- シャワーですすぐ
- 天日で乾かす
この流れに沿って、一つずつ説明して行きます。
もちろん、この方法はヴィンテージデニムだけでなく、レプリカ系デニムにも応用できるので参考にしてみてください。
ここでは、先日手に入れたリーバイスのビッグEを例にとって説明していきます。
汚れのひどい箇所を把握する
まず洗いの工程に入る前に、そのジーンズの観察から入ります。
特に食べシミなどになるでしょうが、目立った汚れの場所があるかを把握ます。
今回使う個体を目視していくと…
各所に油染みがあります。
既に硬化しているので取れるかはこの状態では不明ですが、汚れがひどい箇所として把握しておきます。
見た目に問題はなさそうですが、裾の部分は特に汚れがひどい場所です。道を歩くだけで日々の砂埃が付着しますし、雨の日はどうやっても泥跳ねを避けることが出来ません。
この個体の場合、泥汚れで黒ずんでいるのが目視でも分かります。
このように、特に洗っておきたい場所の目星をつけます。
ジーンズ専用洗剤を準備する
ここからは洗濯するための道具を用意します。
用意する物は2つ。
手洗い洗濯用の桶(写真は娘が赤ん坊の時に使っていたベビーバス)と、専用洗剤。
「色を落としたくないから洗剤は使わない」という方もおられますが、今回の目的である「汚れを落とす」ために、洗剤は必須です。
水洗いだけだと、あっという間に匂いが復活する上にヌメリも取れず、結局何も解決しません。
しかし、どの洗剤でも良いか?というと、そうではありません。
一般的な漂白効果のある蛍光剤などが入っていない、中性洗剤を選ぶようにしてください。
もしできれば、インディゴは落とさず、汚れだけ落とすという「デニム専用洗剤」を使いましょう。
様々な洗剤がありますが、私がダントツでお勧めしたいのが、これ。
普段のジーンズの洗濯でも使っている、ウエアハウスの『ナノコロイド』。
あのヴィンテージを研究し尽くしたウエアハウスが、デニムの洗濯のためだけに開発した独自の洗剤です。
これを使うか、使わないか…その洗い上がりの気持ちよさが全く違うので、私はこれ以外は使いません。
絶大な信頼を置くこの洗剤を、今回のヴィンテージ・デニムの洗濯でも使います。
洗濯の準備を整える
用意した桶に、ジーンズを入れます。
手洗いをするので、桶に水を張った時に、デニムの全体が中に浸かるくらいのサイズにデニムを畳みましょう。
良くデニムの洗濯の際に「ボタンフライは閉めよ」というのがセオリーのように言われますが、それは洗濯機を使用する場合。
今回のように手洗いの場合は不要です。
むしろ洗いにくくなるので、ボタンは外しておいた方が良いでしょう。
また、デニムを裏向けにする必要もありません。
今回は手洗いなので、洗濯機のように洗濯層にデニムがこすられて変なアタリが出ることもありません。
むしろ汚れた場所を確認するために、表のままが良いと思います。
お湯を使う
次に、用意した桶に「お湯」を張ります。
ここでのポイントは2つ、それはお湯の量と温度。
今回の最大の目的は、ヴィンテージジーンズの大敵となる皮脂汚れを落とすこと。
その皮脂汚れを落とす最適なお湯の温度は40℃前後と言われています。
これはつまり、日本人の日々のお風呂と同じ温度。
熱湯の場合、パッチなどの副資材にダメージを与える可能性もあるので当然NG。
常温の水だと皮脂汚れがで水温で凝固してしまいます。これは皮脂汚れの成分が油であるためです。(ラーメンが冷めると、表面に油が白く固まってしまうのと同じ原理)
ですので、その汚れを効率良く落とすため、ここで使うのは必ず40℃前後のお湯にしましょう。
また、水量もなるべく多くしましょう。水量が少ないと、せっかく浮き出した汚れがまたジーンズに吸着してしまいます。
そう考えると、出来るだけ大きめの桶を使うのが良いですね、本来は。
洗剤を入れて、つける
用意した桶、そこに張ったお湯に、用意した洗剤の適正分量を入れましょう。
ナノコロイドの場合、10リットルのお湯に対して、カップ1杯。
桶を軽くかき回し、洗剤を全体に行き渡らせた後、
大切なヴィンテージちゃんを、ゆっくりとお湯に浸からせてあげます。
そう、それはまさに、赤ちゃんを優しくお風呂につけてあげる感じ。
ここで何回かデニムをお湯に押しつけながら、デニム全体にお湯を染み込ませるようにします。スポンジにお水を吸わせるような、そんな感じです。
全体がお湯に浸かったら、5分ほど浸け置きします。
これで皮脂汚れを柔らかくし、次の工程で落としやすいように準備をするのです。
手洗いで押し洗い・もみ洗いをする
先ほどの工程で取れやすくなった汚れを、ここではふるい落とす作業に入ります。
写真の便宜上、片手しか写っていませせんが、両手を使ってジーンズを何度も沈めたり、浮かせたりする感じの「押し洗い」を繰り返します。
スポンジに何度も水を吸わせて、またそれを押して出して・・・という感覚。
人工呼吸よりゆっくりのリズム感で、空気の泡がぶくぶく・ワシャワシャ、出るように押し洗いします。
イメージとしては、お湯をジーンズの生地の間を何度も「通過」させる感じです。
そうすることで、デニム生地の織り目の間に詰まった汚れを浮き出させるのです。
手洗い=こすって汚れを落とすのはNG。それだと、変なアタリがついちゃう可能性がありますから。
これを5分ほど続けると、お湯が嫌な色に変色してくるのを確認することが出来るはず。(汚れの程度にもよりますが…)
言うまでもなく、それは汚れです。
全体のもみ洗いをある程度終えたら、次は初めの工程で確認した「特に汚れている箇所」を集中的にもみ洗いします。
この個体の場合は裾だったので、お湯につけた裾をニギニギしながら、もみ洗いを繰り返します。ここでもこすって洗うようなことはしません。
基本的にはお湯の中では常に「押す&もむ」のみです。
ニギニギと、スポンジのように何度もお湯を通す形で汚れを浮かせていきます。
ここまでで、だいたい、15分ほど。
汚れの程度を見ながら、時間は短くしたり長くしたり、各自調整してください。
そんなこんなで、手洗い終了。
ここからはすすぎに入ります。
しかし、なんと言うことでしょう…
桶がピンクだから分かりにくいですが…白いところにこの汁を移してみると…
ほら!
完全に汚物の色してる…。
たった1本のジーンズから、これだけの汚れが出てきました。
こんな状態で放置しておくことが、デニムに良いハズがない。
色を見てもらえば分かる通り、インディゴが落ちている様子もありません。
ただ、ここで安心してはいけません。次の工程も大変重要です。
浮き上がらせた汚れがまだまだデニムに付着しています。
それを最後までしっかり落としてあげること。
シャワーですすぐ
桶を風呂場に持ち込み、大量のシャワーを浴びさせてすすぎます。
ここでも押したり揉んだりしながら、デニムの中に染み込んだ汚れを押し出す感じですすぎます。
このポイントは、「なるべく多くの水量を使うこと」です。
せっかくここまで苦労して洗ったのに、すすぎが不十分だと皮脂汚れが残ってしまい、結局そこに細菌・バクテリアが復活・繁殖してしまいます。
そしてもう一つのポイントは、ここでもお湯(ぬるま湯)を使うこと。
冷たい水だと、せっかく浮き出させた皮脂汚れが流れ落ちる前に凝固してしまう可能性があるので、人肌レベルのぬるま湯を使って流していきます。
先ほど手洗いで使った桶ですすぎをしてもいいですが、その場合は何度もお湯を入れ替える必要がありとても面倒。
シャワーの水流自体に汚れを落とす役割があるので、お風呂場での温水シャワーでのすすぎを私は推奨します。
桶を使いながらシャワーですすぎをすれば、デニムから先ほどのような嫌な色の「汁」がまだまだ出てくることを目視で確認できるハズ。
それらが出なくなるまでしっかり洗い流していきます。
もう嫌な色の汁が出てこなくなったら…あとは乾かすだけ。
そのまま乾かしてもいいですが、縦型の洗濯機でしたら脱水モードだけはかけても良いでしょう。
回転の遠心力で水分を飛ばすので、生地にダメージはありません。
ドラム型の洗濯機の場合はやめておきましょう。上下に振るい落として乾燥させるので、糸切れなどのダメージが心配ですから。
レプリカ系のジーンズなら、あまり気にしませんけどね。
天日で乾かす
あとは、乾燥です。
他のデニムとは違い、たまにしか洗濯をしないであろうヴィンテージデニム。
そんな少ない洗濯の機会に、妥協せず汚れをしっかり洗い流したいもの。
私の場合、このタイミングで天日で乾燥させます。理由は、細菌を滅殺するため。
中には紫外線のインディゴへの影響を気にする神経質な方もおられるので100%推奨はしませんが、私はあまり気にしないので天日でカラッと仕上げてしまいます(笑)
完成
以上で、ヴィンテージデニムの洗濯の完了です。
これであの古着特有の嫌なニオイ、そしてヌメりが嘘のように消えることを実感できると思います。
全く生地をこすり合わせることなく手洗いで洗っているので、洗濯時の生地や縫製糸へのダメージはほとんどありませんし、洗剤とお湯を使うことで効率的に汚れを排除しました。
もしかすれば、洗濯前と比べるとちょっと白っぽくなったかな?と思うかも知れません。
しかし、それはただ…汚いヨゴレが取れただけ。
洗濯後の姿が、あなたの持っている本来のデニムの姿。
汚れが落ち、さっぱりした手触りを取り戻したヴィンテージデニムは、今まで以上に愛おしく感じることでしょう。
ヴィンテージデニムの洗濯をどう考えるか?
ヴィンテージデニムの「洗濯」は、本当に悩ましい問題。
「色落ちさせたくない」理由で洗濯しない方はたくさんいますし、その気持ちは十分理解できます。
もしそのヴィンテージジーンズが「デッドストック」であったり、「洗濯回数がまだ1~2回の、超ミントコンディションの古着」の場合は、確かにそうなのですが、写真の個体のように既に経年変化が進んでいるジーンズの場合、ちょっと洗濯したくらいで、インディゴがはっきり落ちることはありません。
それに…
今、そのヴィンテージデニムの良い感じの雰囲気を作っている茶色っぽいくすみは、ただ単に汚れで黄ばんでいるだけという可能性があります。
そのデニムの「いい感じの茶色い経年変化」が、長らく洗濯をしていない結果からくる汚れだったり、皮脂が発酵して黄ばんでいるために見えている色で、本当は「洗えば取れる汚れ」の色だったとすれば??
それを「経年変化」と言うのは、…ちょっと違うのかも知れませんよね。
ペンキ跡などならともかく、「汚れ」を「ヴィンテージジーンズの価値」と認めるバイヤーはいないでしょうし。
このあたりはヴィンテージジーンズへの価値観やポリシー、楽しみ方が人それぞれ違いますけれど、
洗濯回数の少ない濃淡のメリハリのあるヴィンテージもカッコいいし、価値のあるヴィンテージを洗濯しながら大切にメンテナンスして穿きこなすオーナーもカッコいい。
やっぱり、ヴィンテージデニムの洗濯は、悩ましい!
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本日もご一読、ありがとうございました。
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