こんにちは、インディ(@aiirodenim)です。
ジョン万次郎の没後120年と、高知にある『ジョン万次郎資料館』のリニューアルを記念し、ベルベルジン監修・ウエアハウス製造で企画された、【ジョン万デニム】。
マニアックなまでにモノづくりの品質を突き詰めるウエアハウスと、数々のヴィンテージを扱うベルベルジンがタッグを組んだ初めてのプロジェクト。
発表されたのは2018年の3月でしたが、限定数(120本)で発売される告知はあれど発売直前までその購入方法がはっきりせず、スペック詳細も今ひとつハッキリせず、実物も見れない中で予約スタートの日を迎えるという・・・。
あの状態で買おうと決断できる人は、相当なジーンズ通でしょう。
結果、このモデルを購入するためにわざわざ高知のジョン万記念館まで行った人も少なからずいて、そういう意味では「デニム愛が試される、購入ハードルが高い」限定モデルでした。
私はというと、高知在住の旧職時代の先輩のご協力を頂き、てんやわんやの末で購入させて頂きました。そして先日、他の皆さんと同様にようやく手元に送られてきた次第。
本日はそんなデニム愛が試された末に購入した「ジョン万デニム」の実物を写真と共にレビューしていきます。
結論、非常に素晴らしいモデルでした。120本しか作られないのは…勿体無い!
目次
ジョン万デニム(限定ジーンズ)レビュー(ウエアハウス×ベルベルジン)
パッケージ
この「ジョン万デニム」。特製の巾着袋に入れられて届きました。
高知県出身のイラストレーター山田貴美子氏による、「ジョン万デニム」を穿いているジョン万次郎の姿をイメージしたイラストが表裏に描かれています。
その袋の中に、なにやら見慣れぬ包装紙が…
土佐和紙だそうです。この和紙に包まれているのは、もちろん「ジョン万デニム」。
ようやく、ご対面。
一目見ての感想…期待していた物をはるかに超える完成度。さすがウエアハウス!と唸らずには要られませんでしたよ。
シルエットとディテール
この「ジョン万デニム」は、ジョン万次郎が日本に帰国した際に実際に持ち帰ったデニム生地とミシンを使い「もしジーンズを作っていたら」という仮説のストーリーと、史実を元にした確かな時代考証の元で作られたオリジナルジーンズになります。
シルエットこそ現代のスタイルでも利用しやすいように気持ち細身に取られていますが、生地やディテールはこの「if」のストーリーを忠実に再現できていると言いましょうか。120年前のジーンズがデッドストックで残っていたらきっとこんな感じだろうな、と率直に感じました。
それだけ「時代の雰囲気」が良く再現されているジーンズだと感じた第一印象。
時代を感じさせるデニム生地
このモデルを手にして、まず驚いたのがこのデニム生地。
公表では12.5ozの生地だったので、かなり目の細かいライトなデニムを想像していましたが…実物は手触りはカラッとしたドライ感&ザッラザラ。そして独特の青味。
「ジョン万デニム」のこれまでの販売資料でデニム生地に関する説明はほとんど無かったけど…このジーンズの大きな特徴はこの生地だと思います。
無理に作ったワザとらしいザラつきではなく、時代を感じさせるザラつきというのでしょうか。リジットではなくワンウォッシュだから、余計にそう感じるのかも。
「頑張ったけど、今の技術ではここまでしか綺麗に織れませんでした」って感じの出し方が絶妙。私もこれまで数々のデニム生地を見てきましたが、ここまで心がワクワクするデニム生地には滅多に出会えません。
これ、もっと商品の販売時にアピールして良かったポイントではなかろうか、と思う次第。
細かいネップが混じり、「紡績や織りの技術が未完成」だった時代のデニムと呼ぶにふさわしい説得力のある生地を作り上げてきました。こういう生地を少ない限定数でもさらっとプロデュースできるウエアハウスの力量は素晴らしい。
デニム生地の特製は、裏側をみると良く分かる。ウネウネのゴワゴワ。この生地の良さは実際に触れないと伝わらないでしょう。私の語彙力では正しい表現ができず…。
セルビッチ耳はイエローでした。
フロントスタイル
前身頃を中心に見ていきましょう。
大きな特徴は、当時(1800年代)の縫製を制限するべく、全て本縫い(シングル縫い)ミシンを使って仕立てられている点です。
使われている糸は全体的に細く、ピッチ(運針数)も多め。
コインポケット(=懐中時計用のウォッチポケット)は1800年代らしく大きめ、且つ左腰のかなり上目に取り付けられています。
コインポケットの口には耳使い。
フロントポケットのスレーキは綿布ではなく、デニム生地がそのまま袋布になっている仕様です。これはかなり新鮮。またポケット口も1本針の本縫いなので、馴染みのある普通のジーンズとは随分と見た目が変わっています。
この時期(1800年代)はベルトがまだ普及していなかったため、サスペンダーボタン仕様。
本来、当時のワークパンツにベルトループはありませんでしたが、今作ではベルトループもつけられています。…が、ご覧の通り、ボディとは別のデニム生地が使用されています。
これはきっと、「後で誰かがベルトループを取り付けた」という世界観を作っているんだと、私の方では解釈しています。
で、ベルトの帯ですが…私の個体は、どうも微妙にデニム生地が違うっぽい。気のせいなのかなぁ。セルビッチの耳の色も若干、違う気がするんです。
同じ生地でも織りが安定していないために(あえて不安定にしているために)違うように見えているだけなのかも知れません。購入された皆さんの個体はいかがですか?
バックスタイル
フロント以上に情報量が多いのが、このバックスタイル。
ヴィンテージのデッドストックのような、素晴らしい雰囲気です。
ポケットは右側だけの片ポケット仕様。縦長のホームベース型ポケットは当時、銃が入れられていたと想定された作り。
ポケット両端に取り付けられた、刻印無しの剥き出しリベット。銅メッキの腐食仕上げかな…?
リベット裏にはウエアハウスのものが使われてますが、良くみるとレザーが挟み込まれています。ポケットにはカンヌキ止めもなく、また12.5ozというライトなデニム生地のため、補強目的で採用されているディテールかと。
バックポケットにはうっすらと見える「M」のステッチ。デニム地と同じ青色でステッチされています。M=万次郎の、Mだそうです。
ポケット内側、下半分には補強のための当て布がされています。その当て布ですが…
フロントポケットもそうであったように、綿布ではなくデニム生地がそのまま使われて補強されてました。良くみるとセルビッチ耳。
耳部分で無ければ折り曲げて縫製する必要が出てしまうので、ポケットの使い勝手を考えた、理にかなった生地の使い方をしています。
隠しポケット的な左バックポケット。
シンチバックの尾錠は2本針仕様。
そのシンチバックはボックス型に縫製されたステッチでヨーク部分に止められています。その上にベルトループが縫製されているのって、新鮮。
そのベルトループですが、現代のようにカンヌキで止められておらず、ここにも本縫いが使われています。
ベルトループの上部も同じく本縫いで。
きっと、穿き込みすることでベルトループのステッチが切れて外れる人が多いことと予想します。
柔らかい鹿皮を使ったパッチ。ジョン万次郎のサインをプリントしたもの。質感が非常に良いです。この素材はヘラーズカフェの定番パンツであるノンパレイルなどで採用されているものと同じ。
腰の左右にはタックが入っています。
1800年代、まだジーンズにテーラードの要素が入っていた時代のものを、こういうちょっとしたスペックで表現しています。
股下の破れを補強するための三角の当て布でさらにクラシカルな雰囲気に。
ヨークの縫製も本縫いで。
細い糸と細かい運針のステッチワーク。
良くみると歪みもあり、それが良い味を出しています。
さすが、ウエアハウスとベルベルジンが手を組んだプロジェクト。見所やウンチクの非常に多い、所有欲を大きく満たす【ジョン万デニム】でした。
【まとめ】ウエアハウスとベルベルジンが魅せた、新しいジャパンデニムの魅力
ジョン万デニム、とにかく良い作品です。一本のジーンズとして見ていて、面白い。
世界で評価されるジャパンデニムは、ヴィンテージをどこまで再現出来るか、という徹底したレプリカ主義がその品質のベースとなってきました。
今回のプロジェクトは、そのレプリカで培った技術とヴィンテージを数多く取り扱ってきたノウハウ、そして時代考証を組み合わせて「正解の無い想像上のヴィンテージ衣料」を作り出す、という試み。
ただ、時代を想像して作るだけでは意味がなく、
ただ、高い品質で作るだけでも意味が無い。
その両方が組み合わさることで、今作で「説得力の高い新しいヴィンテージ」を作り出すことに成功しています。
職人気質で勉強熱心な日本だからこそ出来る、ジャパンデニムの新境地を見た気がしますし、手元に届くまでメディア媒体で展開されていたメイキングストーリーも楽しませていただきました。
販売価格は36,000円でしたが、十分その価値がある傑作。
買えた方、おめでとうございました。お互い、大切にしていきましょう。
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本日もご一読、ありがとうございました。
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