こんにちは、インディです。
本日と明日は、このオリジナルジーンズのプロジェクトに関するお話というよりも、
各メーカーさんのジーンズのこだわりが今以上に楽しめるようになる内容だと思います。
是非、最後まで読んで頂きたい内容です。
目次
経年変化デザイン
オリジナルジーンズのプロジェクトをさらに進化・深化させたい想いで訪れたJOURNEY FACTORY。
その代表の重本さんから頂いた、「経年変化をデザインする」という考え方は、
私のジーンズ企画への考えの浅さ・甘さや無知を痛感させされると共に、
色落ちさせてきたジーンズのアーカイブ、店頭で見かける各ブランドのジーンズ、
それらの見るべきポイントが大きく変わりました。
今日はその「ジーンズの経年変化をデザインする」という考え方と、
そのデザインを構成する重要なディテールに関して共有させていただこうと思います。
経年変化をデザインする、とは何か?
どういうジーンズを目指したいか?=「色落ちの良いジーンズ」とするのであれば、
細部に至るまで「経年変化した後に、どういう姿(ジーンズ)にしたいか」という点を考え、
一つずつ縫製のディティールを積み上げていく、という考え方です。
一言で表すと「良い色落ちのジーンズ作りたい」ってなるので「それは当然だよね」と思うかもしれませんが、ここが大変奥が深くて。
例えば、
この二つのバックポケット。
生産年代が違うのですが、共に同じサイズのウエアハウス1001XXです。
ポケットの形状が多少違う、という外見上のデザインの違いがありますが、
経年変化のデザインも違うのです。
それは、折伏せの幅と形状。
この部分のアタリの出方が、ほんの少し違うのが分かりますか?
これは、ポケットを縫い付ける際に内側に入れる生地の幅が違うため、数年後の経年変化のアタリに影響を与え、見た目に微妙な変化を持たせています。
この部分だけを見ると、本当に小さく、細かいことですが、
「数年後に、この部分に、こういうあたりが出る」という意図したデザインを、
全パーツ、細部にわたって積み上げていくことで、
全体で統一感のある、「最高の経年変化を見せる」ジーンズが生まれます。
経年変化のデザインは“自由”だ。
もしも企画しているジーンズが過去のヴィンテージの完全なレプリカの場合、
そのコピーしたいジーンズを解体し、徹底的に細かく模倣すればそれが「正解」です。
しかし過去のヴィンテージにとらわれず、新しいジーンズを企画する場合は、
企画者がカッコイイと思うジーンズの経年変化の姿を、自由に妥協なくデザインしましょう、というのが重本さんの考え方でした。
自由。それ故に考えること・やることが大幅に増える。
そして、その考えるべきデザインというのが、もう細かくて。
ジーンズの細部に至るまで理解していなければ、細かく指定することは出来ませんね・・・。
では、デザインの中でも重要な、縫製糸・縫い代・ピッチに関してお話をしていきましょう。
縫製糸・縫い代・ピッチでデザインする
「ピッチ」とは何か?
よくレプリカブランドのジーンズの説明で「ピッチにもコダワリました」とか、そういう話を耳にするかと思います。
ピッチに関して私も漠然としか理解できてませんでしたが、このピッチは「経年変化をデザイン」する上で非常に重要な要素となります。
ピッチとは3cmの長さの間で何針縫われているか、という「運針数」を表す指標になっており、
例えば3cmの間に10針、縫われていたら、「ピッチは10針」という言い方になります。
つまり、このピッチの数が多ければ多いほど、
細かく小さい縫い目になる、というコトです。
主にジーンズの縫製で使われているのは、ピッチが8針、9針、12針のパターンが多いようです。
このピッチ、1針変えるだけで、そのアタリの出方も変わってきます。
以下、分かりやすい例ですが、
生産年代が違う、同じサイズのウエアハウス1001XX。
このバックポケット上部の横に二本入った縫い目のピッチは、明らかに違います。
これによりアタリの出方が全然違うのがわかりますよね。
ピッチが大きい左側は、ジャバラのようなアタリが。
一方、細かいピッチの右側は横一線で白いラインが入ったようなアタリが。
しかし、ピッチだけがこのアタリに影響する要素とは言い切れません。
デニム生地もですし、後述する縫製糸の種類や番手の組み合わせで変化するためです。
だから、更に複雑性を増していく、奥が深い世界が繰り広げられます。
縫製糸の重要性
縫製糸にも色々なメーカー、たくさんの種類があります。
素材も様々で、綿100%の「綿糸」と呼ばれるものから、外側を綿で芯はポリエステルで補強されたコアスパンと呼ばれる糸があったり。
そして、その糸の色も様々。
写真はある縫製糸の会社のサンプルの一部。
これが何社もある訳ですから、選択肢がいかに多いことか。
縫製糸は染色されていることから、デニムと同じく経年変化をしていきます。
要は、洗濯や摩擦を繰り返すことで、退色をしていくのです。
退色後の色味も、経年変化をデザインする一つの要素ですから糸の選択は手を抜けません。
さらに、糸には様々な「太さ」があります。
糸の番手
糸の太さは「番手」という表記で表されます。
デニムで使われている糸の番手は、6番手、8番手、20番手、30番手あたりが多いのですが、
数字が少なくなればなるほど、「太い糸」になります。
つまり、太さは、30番手<20番手<8番手<6番手 という順番です。
糸の太さは、見た目が変わるだけでなく、デニムのアタリ=経年変化にも影響を与えます。
分かりやすい例を出しましょう。
耳を縫い合わせる番手で経年変化(デザイン)が変わる
これはジーンズのサイドの耳のアタリです。
「耳のアタリ」に関してはジーンズの色落ちを語るときに必ずトピックスとして上がる話です。
しかし大抵は、その耳の両端の跡がくっきり出たか? という視点で見るかと思います。
しかし、「経年変化をデザインする」考えに基づくと、その耳を縫い合わせる「見えない縫製糸」にまで考えを及ぼさなくてはなりません。
どういうことか?
耳を縫い合わせる「見えない縫製糸」=ここです。
確かに、各ブランド、よく確かめて比べて見ると、この番手やピッチがそれぞれ違います。
そして、この縫製糸が・・・
この、外側から見える縫い合わせのキワの部分の色落ちに影響を与えます。
確かに、私物のアーカイブを見てみると、この縫い合わせの糸が太い方が、このキワの部分のアタリがはっきり出る傾向があります。
ここまで私は考えられていたか? ・・・NO。。。
建築のデザインの世界で「神は細部に宿る」という言葉がありますが、
アーティストの重本さんも大切にする、ディテールへのこだわりです。
その他にも大変貴重なお話しをたくさん頂きました。
アタリが出ないから悪い、という訳ではない。
バックポケットに、スレーキ(補強布)が入っているモデルがあります。
例えばEVISUなどがそうですね。
スレーキが入っていないと、ランダムなアタリ。
スレーキを入れると、生地表面の凹凸がしづらくなる(アタリが出にくくなる)ため、規則的な色落ちになる傾向があります。
ただ、重要なのは「デザイン」であって、
決して「アタリが出ないから悪い」わけではないと言うことです。
その部分をアタリが出ないように意図して作る、それもまた「デザイン」です。
どういう意図を持って経年変化後をイメージするかにより変わってきます。
耳のアタリをデザインするための縫い幅
セルヴィッチジーンズを履いていれば目立つ、サイドの耳のアタリも、ただ「耳付き」だけの指定ではダメです。
縫い合わせる耳の幅も指定する。
1mm単位の差で、経年変化の見た目がだいぶ違うんですよ。
左から、片耳5mm(計幅10mm)、片耳6mm(計幅12mm)、片耳7mm(計幅14mm)。
もちろん、細ければ良い、太ければ良い、といわけではなく、
全体の経年変化のデザインを考え、幅に関してもこだわってその幅を決めるべき、と言うことになります。
長くなるので、次回に続けていきます。
この話「経年変化をデザインする」を読んだ後、
手持ちのジーンズを見比べるのが、今までよりほんの少し、楽しくなるはずですよ♪
本日もご一読、ありがとうございました。
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