こんにちは、インディ(@aiirodenim)です。
アメカジファンにとって、ミリタリーアイテムは身近なアメカジプロダクト、、、のようで、意外と苦手意識の強い方も多いジャンルだと思います。
リアルマッコイズやバズリクソンズのようなミリタリーレプリカブランドのプロダクトはアメカジとして認めつつも、実物のミリタリーアイテムはアメカジとはちょっと違う、、、そのように思っている方も少なくないでしょう。
また、数あるミリタリーアイテムの中でも、A-2のようなレザージャケットやMA-1などの、いわゆる「渋カジ時代に人気のあったミリタリーアイテム」はアメカジとして認めるが、それ以外は敬遠している方もいらっしゃると思います。
そう、アメカジファンにとってのミリタリーは、おそらく「渋カジ」で時が止まっているのです。
しかし、渋カジ全盛期に注目されたミリタリーアイテムは、全てのミリタリーアイテムの中の、ほんの一部に過ぎません。
歴史を遡るだけでなく、アメリカ以外のさまざまな国のミリタリーを深掘りしていくと、アメカジファッションに通用する魅力的なアイテムがまだまだ沢山あることに気がつきます。
そこで本日は私自身、数多く見てきたヴィンテージの中でも、最も気に入っているミリタリーヴィンテージの一つである「M-41 HBT Jacket」についてお話ししたいと思います。
このアイテムはミリタリーな機能性に加え、今のファッションへの汎用性と、アメカジファンが大好きなディテール要素に溢れた、隠れた名作だと思います。
目次
M-41 HBT Jacket(M-42)/US ARMY
概要
こちらが本日ご紹介する『M-41 HBT ジャケット』です。M-42 HBTジャケット、と呼ばれたりもします(その理由は後述します)。
このモデルはUS ARMY、つまりアメリカ陸軍に採用された一着で、US ARMYのワーキングデニムコート(カバーオールとも呼ばれる)の後継モデルとして企画されたモデルになります。
ヘリンボーンツイル一枚で作られたこの一着は、シャツジャケットのような感覚の、ライトアウターという位置付けになります。
当時は戦地での土木工事などの作業用着ですが、夏用の戦闘服としても採用されていたそうです。
このM-41 HBT ジャケットの生産期間は1941~1942年と短く、およそ1年ほどしか作られていません。
そう、80年も前のモデルであり、生産期間が短いこともあって、古着市場でも流通量が非常に少ない希少モデルになっています。
HBTとは、HERRING BONE TWILLの略。
つまり、ヘリンボーンツイルのアイテムということになります。
このヘリンボーンツイルがUS ARMYで採用され始めたのがこの1941年以降なので、ARMYの支給品の中でも歴史の節目の一着と言えるかも知れません。
ちなみに、同じ1941年にUSMCで、その後名作と呼ばれる「P-41」と呼ばれるヘリンボーンジャケットの支給も始まったので、このタイミングからさまざまな部署でヘリンボーンツイルが広く使われ出したということでしょう。
このモデルは今ひとつ古着の世界でもアメカジ界でも注目度が低く、それゆえかレプリカブランドもあまりレプリカをリリースしないモデル。
どれほど人々の関心が薄いかというと、「呼び名が統一されてない」ほど。
この頃のモデルにはミルスペックのタグがついていなくて、簡素な布タグだけがついていて、しかも正式名称の記載がタグに無かったためか、古着の世界でも今ひとつ呼び名が統一されておらず、今回のようにM41 HBTと呼んでいたり、またあるところではM42 HBT と呼ばれていたりします。
ただ、アメリカの資料を見ると実際に41年に納品された記録が残っているので、M41と呼ぶのが正しいのかな?
で、このモデルの後に、M-43 HBTという、その後広く米軍で支給される、ヴィンテージミリタリーの中でメジャーな存在が登場するのですが、
先述したデニムのワーキングコートと、そのM-43との間に、短期間だけ登場した今回の『M-41 HBTジャケット』はシンプルな構造の中に、さまざまな要素がバランスよく盛り込まれたモデルになります。
私も色々なヴィンテージミリタリーを見てきましたが、このモデルはとても魅力的なディテールとファッションとしての実用性を備えているのです。
ディテール
40年代の経年変化が楽しめるヘリンボーン生地
まず、このモデルの数ある特徴の中でも最も魅力的なのがこのヘリンボーン生地です。
「魚(ニシン)の骨」を表すヘリンボーンという言葉の通り、射線が入った織り目が特徴の生地ですが、当時の荒々しい織り方のせいか、写真のように凹凸がはっきりと浮き出るのが特徴。
また糸の染めも安定していないのか、色落ちするので、スモーキーな色の経年変化とアタリが魅力的な生地です。
なお、この当時のヘリンボーン生地を楽しむ提案として、オリジナルアイテム「FIELD FACE MASK」がありますので、よろしければこちらもご覧ください。↓ ↓ ↓
小さめの6角フラップ+プリーツポケット
魅力的なディテールの一つが、胸元の2つのポケット。
真ん中にプリーツが入った6角形のポケットです。フラップも6角形になっています。
これが、US ARMYのジャケットとしては非常に珍しい仕様。
このあとの時期(後継モデルのM-43 HBT以降)では、ジャケットのポケットはどんどん大型化していきます。しかも、もっとシンプルな四角形に変更になります。
それと比べると、ポケットの大きさは小さく、作りも凝った仕様。
どちらかというと、当時のワークシャツに近い作りになっています。
非常に珍しい腰帯仕様
では、これはシャツか?というと、やはりジャケットとして作られているものになります。
なぜなら、このアイテムには「腰帯」と呼ばれる、裾の下に帯パーツがついているからです。しかもその腰帯にまでボタンが配置されていることから、外に羽織る目的=ジャケットとして作られていることが分かります。
この後に支給されるM-43 HBT以降は、パンツインするために腰帯は排除されています。
この腰帯ですが、我々はデニムジャケット等で良く見る仕様なので珍しく無いように感じますが、ミリタリーアイテムとしては非常に珍しいです。
少なくとも、ヘリンボーンのヴィンテージとしてはこれが唯一だと思います。
サイドの鉄製アジャスター
そして、腰帯部分には、アジャスターがつけられていて、絞れる構造になっています。
裾のバタつきを抑える目的でしょう。この仕様も、US ARMYでは珍しい仕様。
素材は鉄製で、黒いラッカー塗装が施されています。
ちなみに裏には小さく、イカリのマークが刻印されています。隠れミッキー的に、見つけると楽しいポイントです。
フロントや袖など、ボタンは全て「13スターメタルボタン」が採用されています。
「13スターメタルボタン」はUS ARMYのHBTアイテムで良く採用されていたボタンであり、アメリカ独立宣言時の州の数を示した13の星の刻印を施したボタンに黒ラッカー塗装がされたものになります。
なお、このボタンも鉄製です。
写真のものは塗装が剥げてきていますが、鉄の錆止めの意味と、メタルのままだと光が反射して敵に見つかりやすくなることを避けるために、黒のラッカー塗装がされていたと思います。
しかもこのボタンですが、裏はドーム状のリベット、しかもツープロングなのですよ。
ヴィンテージデニムの世界でも非常に有名な仕様で、2本の爪で生地とボタンを貫通させて留めるタイプの構造になっています。
1940年代のヴィンテージワークによくみられる仕様ですよね。
剣ボロ仕様の袖
そして、極め付けの珍仕様が、この袖です。
ジャケットとして作られたこの一着なのに、剣ボロ仕様。
いわゆるカジュアル/ドレスシャツと同じ袖の作り方がされているのです。
この時代のミリタリーのジャケットとしてはとてつもなく珍しい仕様。
このアイテム以外で見たことがありません。
この袖のおかげで、ミリタリーにありがちな袖が太すぎてバタバタなびくようなカッコ悪さがなく、着用するとシャツと同じように、袖周りが美しく治ります。
背中のプリーツ
背中の両肩部分にはプリーツが入っていて、可動域が確保されています。このお陰で肩に突っ張った感じが一切しなくて、非常に軽快な着心地です。
脇のガゼット
脇にもガゼット状の切り返しが入っていて、胸〜腕周りが立体的になるように工夫されています。
パンツの股部分に採用されることが多いガゼットですが、脇にこのガゼットが嵌め込まれているのは珍しいですね。
M-43 HBT以降では消滅している仕様でもあります。
シンプルなルックスですが、細部まで丁寧な作り。
襟の形
襟の形もトレンチによく見られるような形状で、襟を立たせても絵になります。
尚、この襟の形状は今後のモデルでも継続して採用されている仕様です。
着用画
これらディテールも魅力なのですが、このM-41 HBTジャケットを「ヴィンテージ銘品紹介」としてお伝えしたい理由が、そのシルエットにあります。
80年前の、しかもミリタリーのアイテムにも関わらず、袖の長さ、腕周りの太さ、身幅、着丈など、びっくりするぐらい今の時代にフィットしたパターンなのです。
ミリタリーの実物アイテムにありがちなのは、袖が長かったり、腕周りや身幅が太かったり、裾が広がっていたりと、機能としては高いかも知れないがファッションとしてどこか破綻していて、「着ていて、ダサい」ところがあるところは異論ないでしょう。
しかしこのM41 HBTジャケットには、そういうところが一切ありません。
それでいて、リーバイスの2ndのデニムジャケットに形状も構造も良く似ているので、我々アメカジファンとしてデニムジャケットの生地バリエーション違いのように着こなせます。
古い希少なコレクターアイテムではなく、実用アイテムとして、この令和の時代に十分活躍できるスタイルなのです。
ヴィンテージの価格が違和感あるレベル、、、
現代的なファッションにも合わせやすく、
ディテールも珍しく、
80年前の、戦前のモデルで、
過渡期に誕生したというストーリーもあり、
しかも生産期間が非常に短く、
現存する数がめちゃくちゃ少ない一品。
しかし認知度が低く、需要が少ないせいか、
たまに古着屋に入ってくると2〜3万円くらいという、安さで売り出されます。
こんなの、リーバイスとかだったら50万円以上しますよ。
世の中は需給バランスで価格相場が作られていることを実感する価格。
言い換えれば、今なら非常にお手軽に手にすることのできるヴィンテージミリタリーと言えるでしょう。
とはいえ、数が少ないので店で見つけられることは稀だと思いますが、一度宝探しのつもりで、古着屋さんを探してみてはいかがでしょうか?
まとめ
というわけで、本日はUS ARMYの『M-41 HBT ジャケット』の魅力をたっぷり語らせていただきました。
私も改めてこのモデルを引っ張り出してきて見てみると、ファッションアイテムとして今でも通じるディテールに、本当に感動してしまいました。
世間の認知度は低いですが、もっともっと、評価されるべきヴィンテージミリタリーだと思います。
わざわざヴィンテージを探さなくても、ウエアハウスが2021年の春夏のコレクションでレプリカをリリースするようなので、気になる方はそちらを一度、チェックしてみると良いと思いますよ。
ウエアハウスの2021年春夏のコレクションに関しては、こちらの記事もご参照ください。
Youtube
本日の内容を、さらに詳しく動画で語らせていただきました。
よろしければ、こちらもご覧ください。
本日もご一読、ありがとうございました。
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