こんにちは、インディ(@aiirodenim)です。
昨年から企画をじっくりと進めている、オリジナルの半袖デニムシャツ。
企画の経緯は、私自身が「暑い夏でもデニムの経年変化が楽しめるシャツが欲しい」というところでして、満足できる既製品が全く無いことから、自分で作ろうと思い始めました。
今日はそのオリジナルのデニムシャツの企画にまつわるお話をしたいと思います。
目次
アイイロデニムワークス・オリジナル半袖デニムシャツ
既存の半袖デニムシャツの実情
「デニムシャツ」、その中でも「半袖のデニムシャツ」となると、多くのブランドが「ウエスタンシャツをベースにして袖を切って半袖にしただけ」とか、「生地をライトオンスにしただけ」というようなものが多いのです。
上の写真は私物のリーバイスの物、他にもジャパンブランドからもデニムの半袖シャツって出ているので私もそれらを購入して着用するのですが、どうしても満足できない。
ルックスだったり、着心地だったり、色々な不満点が多く見受けられます。私がこれまで買ってきた数々の半袖デニムシャツ、どうも長続きしない。
シャンブレー素材の物だったら、色々と選択肢は広がるんですけどねぇ・・・。
決して独創的なオリジナリティーをデニムシャツに求めている訳では無いのですが、「デニムシャツ=ウエスタンシャツとは、こういうものだ」という、昔のカウボーイ時代に作り出されたフォーマットにこだわり過ぎている結果、今の時代にマッチしない着心地とルックスになっているのは否めません。
そういう昔ながらのウエスタンシャツ(デニムシャツ)のスタイルもいいのですが、ボトムが軽く太くなる夏場のスタイルには不向き。
太陽の照りつく夏に、もっと気軽に、日常に寄り添う新しい定番となるようなデニムシャツが作りたいと思いました。
固定概念にとらわれない自由な発想で創り上げるサードウェーブなデニムシャツの企画の始まりです。
オリジナル・デニムシャツのディテールを考える
企画を初めてすでに1年以上。
現在はサンプルの着用テストに入っています。以下、その写真を元に、どの様な考察をベースにディテールを作っているか、まだ物作りの途中段階ですがお話をして行きます。
新しいデニムシャツの考察にあたり、以下の3点を物作りの主軸に置くこととしました。
- 夏場のスタイルに合う美しいシルエットと着丈
- 夏場でも快適な着心地
- デニム生地の経年変化の楽しみ
経年変化を楽しむというのはデニムアイテムの醍醐味でありますが、美しい経年変化を目指すには着る回数が多くなければなりません。
つまり、奇をてらうことなく、夏のスタイルに合う普遍的なシルエットであるべきであり、着心地も不快なものであってはなりません。
しかし、夏場にデニムって、そもそも「着心地」って良いものではありませんから…そこが今回クリアーするべきハードルの一つだったりします(^^)
デニムシャツの着心地をどう改善させるか
デニムシャツの着心地を考えた時に、一つとても重要なポイントがあります。
分かりやすいのが、ヨーク部分。
下は、リーバイスのデニムシャツの写真です。
胸から背中上部にかけて、このような「当て布」がされているのが、デニムシャツの基本フォーマット。通称:ヨークと呼ばれ、装飾の役目と強度アップの両役を担うディテールです。
デニムシャツと聞くと、ブランドごとにデザインが違うもののほぼ100%この「当て布」仕様になっています。しかしこの仕様のせいでデニムシャツが著しく夏場の着心地を損ねている、と思います。
当て布、つまり、ここはデニム生地が二重になっている訳です。これにより2つの弊害が出てきます。
例えば、10ozのデニム生地を使ったデニムシャツでも、このヨーク部分は「20ozのデニム生地を使っているのと同じ重さと厚み」を感じることになります。夏場に20ozのシャツを着ている、と考えただけで汗が出てきませんか?
さらに、デニム生地というのは「綾織り」で織られた生地で、伸縮性はあるけど通気性が悪い性質を持っています。それを二重に重ねることで、尚更通気性が悪くなる訳です。20ozのデニムより、10oz×2枚重ねの方が通気性が悪い。
ステッチ部分にも目を移してみましょう。
このようにステッチが重なる部分は、デニム生地を折り曲げたものをいくつも重ねて縫っています(折伏せ縫いや巻き縫い)。数えていけば、結果的に6枚重ねだったりする部分もあるほど。
その場所だけは10oz×6=60oz !?!?
その箇所の生地は硬く、通気性も悪くなります。
「夏場の日常に寄り添う新しい定番となるようなデニムシャツ」というコンセプトを考えた時、デニムシャツの良さを崩すことなく、これらの着用時の不快となるであろう箇所を如何に削ることが出来るだろうか?ということをまず考えることにしました。これは、今回の企画にあたり全ての箇所で共通して念頭に置いていることです。
ヨーク部分の縫製を見直してみる
まず、着手したのが、そのヨーク部分です。
着心地を損ねる原因=デニム生地を二枚重ねにする「当て布形式」以外の方法を考えた結果…。
肩部分と胸部分の1枚生地を「巻き縫い」で縫製し、ヨーク部分を装飾としても存在させながら、ステッチ部分のアタリによる経年変化の面白さを残せるようにしました。
分かりやすい例で言えば、1stや2ndのデニムジャケットのヨーク部分と同じ縫製です。
そのため強度的にも問題がありません。それにあのウネウネのアタリも期待できます。
ただ一つだけデメリットがあるとすると、この縫製(巻き縫い)は「直線」しか出来ないということでしょうか。よって、ウエスタンシャツによく見られる曲線を多用したヨークのデザイン表現はこの手法では出来ません。
しかし、これ(直線)はこれでデザインはシンプルで可愛いと思いますし、変な装飾を入れるよりこの方がスタイリングの幅は広く、着用機会は増えるはず。実際に今サンプルの着用テストを繰り返していますが、これだけでデニムシャツの着心地が大きく改善されました。肩が軽い、通気性がある、着やすい。
デニムシャツのシルエットを見直してみる
もう一つ、デニムシャツの着心地が悪く感じる原因はそのシルエットかと。
デニムシャツのフォーマットでは細身でウエスト部分が絞られた形状になっているので、背中部分が張る感触があり、私の体型に合わないだけかもしれませんが「肩が凝る」(でもデニムが好きだから着るんですけど)。
それに背中からの見た目も、なぜか華奢な雰囲気になってしまう(デニムシャツを着ている人のイメージ=ひょろっとした人)。
そこで、シルエットはボタンダウンのシャツの研究結果もフィードバックしつつ、ボックスシルエットにして着丈および胴回りのサイズを調整して新しく作り上げました。背中中央にはプリーツを入れて背中の張り感を無くし、背中の大きさ・ゆとりが出せるようにしました。
パターンはきっと何度も修正が必要かと覚悟してましたが、サンプルの時点でまぐれアタリで一発で出来ました。
デニムシャツと言うより、ワークシャツに近い雰囲気になっています。
そう、これはワークシャツ+デニムシャツって感じですね。
襟の形状に関しては、まだ改善できる余地がありそうなので、これはもう少し勉強して思い通りのものが表現できるようにギリギリまでパターンを調整して行きたいところ。
サンプルを作ってみて、改めて気が付いたこと。このポケット部分は、多くの生地が重なりあう部分であり、言い換えれば通気性を損なっている箇所。
次のサンプルでは、ポケットの裏は平織りのシャンブレーにして、そこは少しでも軽いディテールにしたいところ。
ポケットの形状はこのホームベース型で行くか、別の形にするのかはまだ悩み中。
一応、サンプルではピスネームもつけてみましたが、無いほうが良いかもと考えたりして悩んでいます。
ボタンを見直して、着まわし幅を広げる
もう一つ、デニムシャツ(ウエスタンシャツ)といえば必ず採用されている「お約束」が…スナップボタン。ですが。
これは採用しません。まず、私自身スナップボタンが好きでは無い。あの子供っぽさが、どうしても苦手で…。
不採用の理由は他にも2つ。
一つは「重い」こと。スナップボタンは構造上、1ボタンに対してメタルパーツが4つも必要なので、それを6つも7つもつけると重量が出て、夏場に欲しい軽さが損なわれます。
もう一つの理由は「ボタンをしていない時の見栄え」です。
前のスナップボタンを開けた状態でデニムシャツを着るシーンがあると思いますが、ボタンだけじゃなくて、受けの凸のパーツがキラッと見えるあれが…どうもニガテでして…。あの状態でデニムシャツが似合う人って、実は結構限られていると思うんだ。
そこで、ボタンは通常の形状のボタンを採用します。現在のサンプルでは試しにアルミ製のボタンをつけています。このアルミボタンの素材の良し悪しは後々判断し行きますが、スナップ→ボタン形式への変更はまずは成功。これにより前ボタンを止めない着方も違和感が無くなりますし、着用の幅も広がるようになります。
デニム生地の選定について
ただ、非常に難しいのが、デニム生地のセレクトです。
ここが全然うまく進んでいない。
様々な8~12ozのデニム生地候補をピックアップし、それらの経年変化テストを実施。
しかし、ライトオンスのデニム生地って、色落ちに非常に時間がかかるのです。一応サンプル用に選んだのですが、正直まだ完全に良し悪しが判断しきれない状態。
今回私がテスト用にセレクトした生地のテスト経過で言うと、8ozよりも10oz、10ozよりも12ozの方が、魅力的な色落ちを見せています。ぐぁ…。
しかし夏場に着ることを考えると、どう考えても8oz以上は無理。今着ているサンプル=8ozで、夏場は限界。
むしろ、8oz未満の軽さが本当は欲しいところ。…でも、色落ちの美しさにも妥協したくないのです。この生地のセレクトに関しては、もう少し時間をかけなければいけません。
まだまだ続く、考察
今、ものとしての完成度は5割くらい。
サンプルを手にして満足できるポイントも多かったですが、改善できる箇所もたくさん見えました。
今の着用テストをあと3ヶ月ほど続け、次のサンプルに入る予定。
その時にはアイイロデニムワークスらしい、デニムシャツの新しい提案がお見せできればと思っています。
まだ他にも説明仕切れてないディテールがありますが、別の記事でご紹介していきます。皆様もぜひ、ご意見をお聞かせください。
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本日もご一読、ありがとうございました。
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