こんにちは、インディ(@aiirodenim)です。
アメカジアイテムの代表的なアイテムの一つ「スウェットシャツ」。
先日、N.HOOLYWOOD(N.ハリウッド)と国内屈指のスウェットブランド=LOOPWHEELER(ループウィラー)による初のコラボレーションアイテムとして、スウェットシャツがリリースされていました。
さて、この写真のスウェットのVガゼットを見ながら…そう言えば一般的な説明として、このガゼットが付けられている目的に関して諸説あるというか、説明に統一感が無いなぁ、と思いまして。
雑誌などでも一時期間違った説明がされていたこともあり、我々の理解にも混乱が見られるので、ここで改めて整理してみようと思います。
目次
スウェットシャツのVガゼット
2種類の役割がある首元のVガゼット
スウェットシャツの中には首元にVガゼットと呼ばれる、三角の切り返しのようなパーツがついているものがあります。
ヴィンテージのスウェットシャツに見られた仕様で、昔のBOON!などの雑誌で書かれていたのは「汗止め」の役割としてでした。しかし・・・実はこれは汗止めでは無い、という説明をされることも多いのです。
その別の役割として言われているのが「リブ素材のガゼットで伸縮性を持たせて首元の生地のヘタリを防止するため」=伸縮補強の役割という説明。
今、スウェットのガゼットの説明として調べて見ると、前者の「汗止め」として説明している所はどちらかというと少数派。多数派は「首元の生地のヘタリの防止」=伸縮補強の役割として説明されています。中には「汗止めと伸縮補強のため」という両方を記載しているところも目立ちます。
そんな状況ですから、我々の消費者の中でも「汗止めだ」「いや、ヘタリ防止の伸縮補強だ」のどちらかで理解をされていると思いますが、結論から言えば「Vガゼットには両方の役割がある」ということになります。
ただこの理解では十分ではなく、もっと正確に説明すると、
・「はめ込み式のVガゼット」は伸縮性を持たせた補強目的
・「貼り付け式のVガゼット」は汗止めが目的
ということになります。はて、どういうことか?
はめ込み式と貼り付け式のVガゼット
まず、このVガゼットにはその縫製仕様において「はめ込み式」と「貼り付け式」という2つの方式があることを理解する必要があります。
外観は非常に似ているのですが、この2つは役割・機能が大きく異なるのです。よって、Vガゼットの説明をする際には、「はめ込み式」か「貼り付け式」かで説明内容を分ける必要が本来はあるはずです。
尚、両者の見分け方は後述しますが、とても簡単です。
はめ込み式Vガゼット
まず、「はめ込み式」について説明しましょう。
1950年代までに多く見られたスウェットの仕様で、首元のスウェット生地をV字にカットし、その部分に三角形のリブ編み素材の生地を両面から貼り合わせてはめ込んだ仕様のことを言います。
このリブ編み素材は横方向への伸縮率が大きいことが特徴。
V型の三角部分がリブ編み素材になることで、首の出し入れをするときにそのリブが伸びて着脱が容易になり、且つスウェット生地を無理して引っ張らないため、生地の伸び防止に役立つ訳です。
このはめ込み式Vガゼットには、前側だけの「前V」と、前と後ろ両方に付けられた「両V」と呼ばれる仕様があるのはご存知の通り。
当然、「両V」の方が首元の伸縮率が高くなるので、着心地は良くなる訳です。「両V」がもてはやされるのはそれが理由。生産工程が増えるため、お値段も高くなります。
はめ込み式の場合、このように裏から見てもリブ編み素材のガゼットの形が見えるので、見分けは非常に容易です。
このはめ込みVガゼットは製造工程上において手間がかかるため、時代の流れとともに無くなっていきます。ヴィンテージだと、両Vは1940年代まで、前Vも1950年代まで。特に両Vのヴィンテージは大変貴重な品。
尚、現在レプリカ系ブランドが作っているスウェットのほとんどがこの「はめ込み式」です。その場合のVガゼットは「伸縮補強」のためということになりますね。
貼り付け式ガゼット
一方で1950年代以降に増えたのが、後者の「貼り付け式ガゼット」。
スウェット生地の首元に、三角の別の生地を上から縫い合わせた仕様のものになります。
この写真は貼り付けガゼットですが、貼り付ける記事にリブ編みっぽい素材を使うことで、表からの見た目ははめ込み式と見分けが付きにくいですね。ただ、貼り付けの場合はガゼット裏もスウェット素材の裏地のままなので、見分けるには裏を見ましょう。
この貼り付け式ガゼットは汗止めの目的。チャンピオンのHPにも「汗止めとして生まれた」と書かれています。ただ、飾り目的のものもありますのでこの辺りは若干曖昧です。
私見ですが、汗止めと言われても・・・あのV部分に貼り付ける生地にどのような素材を使ったとして、アスリートの流れ出る汗を止めるというにはちょっと無理のあるサイズ感と形状だと思ってしまいます。そもそも吸汗性に優れているのがスウェット素材の特徴なので。
それはさて置き、首元の伸縮率という点では先述のはめ込み式ガゼットには劣り、また首元も伸びやすいため、着心地や長期着用という点では前者のはめ込み式には劣ります。
ただ、首元が伸びたスウェットも味があってカッコいいという見方も出来るので、このあたりはご自身のスタイルと好みの問題になってくるでしょう。
【まとめ】
あなたが持っているスウェットは、どっちのVガゼットでしょうか?
今回の記事が、その手持ちのスウェットのガゼットの正しいウンチクを理解する一助になれば幸いです。
ヴィンテージブームに湧いた20年ほど前の雑誌では、誌面で紹介されていた古着やレプリカのスウェットシャツの多くははめ込み式のガゼットに関わらず、「汗止め」と説明されることが多かったように思います。
私も長らく、はめ込み式と貼り付け式の仕様の違いを理解していませんでしたし、全てのVガゼットが「汗止め」だと思っていた一人。当時も「これが汗止め?」と疑問に思っていたものです。
この正しい知識を知った時には、ようやく仕様と目的が腑に落ちたと同時に、限られた素材・技術の中でアイデアを持って良い商品を作る昔の物作りって面白いなぁ、と思った次第でした。
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本日もご一読、ありがとうございました。
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